浅草で小さな古いファンシーショップを営む草治郎。レジの奥に何年も置かれ続けているパイプ椅子に静かに浅く腰掛け、一日一日が過ぎていくのをじっと見届ける。楽しげに商品を運び購入し、大事そうに抱えて持ち帰る浅漬け臭い少女たちの姿に、ささやかな喜びと繰り返される日常の退屈を思う。これで、いいのかもしれない。

そんな中、どこで紹介されてしまっただろうか、こんな小さなファンシーショップに、外国人客がニョキニョキと雑草の如く増え始める。草団子を齧りながら英語でばかり話しかけてくる外国人客に浅はかにもイライラが募る草治郎。そもそも中学生の時から英語が苦手なのだ。ファンシーショップというスペルさえ、分からないのだ。逃げ出したい。何処へ？草原？

そんな折、忘れかけていた女、浅子から絵葉書が届く。嗚呼、そろそろアイツも出所したところか・・・。草治郎の中に北国の演歌が流れ出す。温泉街ででも、ひっそり生きてってくれ。僭越ながら浅子の幸せを願う。

ふと、絵葉書を裏返すと、浅草寺の写真。何故？消印は浅草！？そっと立ち上がる草治郎。営業中に立ち上がる草治郎を、ここ十数年、見たものはいなかった。パイプ椅子を引き摺りながら、店を出る草治郎。そんな草治郎に驚き、慌てて追いかける商店街の人々。草治郎の足取りが徐々に早くなっていく。浅草、男の衝動が走り出す。草々。

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