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人と情熱とエンタテインメントが渦巻く劇場
公演情報詳細
PERFORMANCE DETAIL
【Introduction】
自分のことを書こうと思ったら、他人の話ばかりになってしまう。毎回そうなのだ。箱庭円舞曲の台本を書くときは、自分の内側にある、現代社会の中で生きていくために発生する、切実なわだかまりを描こうとする。誰かとの軋轢、誰かとの齟齬、誰かとの不和、摩擦、確執、対立、葛藤。自分を描くためには、常に誰かが必要になる。それは、そうなのだ。自分が自分であるということは、自分だけでは担保できない。あなたがあなたであることを認めてくれるのは、あなた以外の誰かなのである。回りに誰かがいるから、あなたはあなたでいられる。だから、必死で自分のことを書こうと思っても、他人の話にばかりなってしまっていた。
そういうことなのだろう。
ならば。私を、私として最初に認めてくれたのは、誰なのだろう? 両親のどちらかである可能性が高い。生まれてきた瞬間を見た、ということであれば、母よりも助産師や医師が先になってしまう。それでは味気ない。では命名してくれた瞬間だとしたらどうだろう。私の名前を付けてくれたのは、父だ。あの父のことだから、私がまだ母の胎内にいるうちに、考えに考えて決めてくれていたはずだ。祖父の名前から一文字受け継いでいた父は、同じ一文字を私にも受け継がせた。私も子を持つことになったら、その一文字を引き継ごうと思ったこともあったが、やめた。一文字あろうがなかろうが、家族は家族、血縁は血縁だ。
そんな風にして、父の話になった。父は、福島県耶麻郡磐梯町大字更科字大曲で生まれ育った。1950年8月4日に生まれ、2017年12月29日に死んだ。享年68歳。友人も多く親戚づきあいもまめだった父の葬儀には、たくさんの人が訪れ、香をあげてくれた。一介の地方公務員の葬式にしては、盛大だったと思う。長くはないかもしれないが、濃い生涯だったのではないだろうか。若かりし頃は宮沢賢治に憧れ、詩作を志し、芝居にも片足突っ込んでいたらしい。自分が演劇なんぞを始めてから、叔父から聞かされた。驚いた。我がことを我が子に語らない父だった。戒名は「堅峰直英清居士」になった。私に引き継がれた一文字は、含まれていない。
一度、父の話を書いたことがある。2011年9月に、日本劇団協議会主催で上演していただいた『父が燃える日』という作品である。還暦を迎える父を労おうと、子供たち三人で家族旅行を計画し訪れた旅館での、数日間の物語だ。もちろんフィクションだが、前年の夏、父を実際に還暦旅行に連れ出しており、「もしもあの時、実はこうだったら?」「もしもあの時、こうなっていたら?」と妄想を膨らませながら書き上げた記憶がある。この公演は、あまり私の芝居を観に来なかった父が、珍しく観に来てくれた。自作を観てもらったのは、10年ぶりくらいだったと思う。観終わっての感想は、ほとんどなかった。こちらも恥ずかしくて照れ臭くて、ちゃんと聞こうとしなかった。聞きたくても聞けない今となっては、後悔するほかない。父は、あの作品のことをどう思っていたのだろうか。父は、私のことをどう思っていたのだろうか。
私を人間として最初に認めてくれた彼を燃やしながら、こんなことばかり考えている。人間は、なかなか燃えてくれないものだ。
【-outline- あらすじ】
現代、会津若松市の火葬場、待合室。
市営の火葬場は市街地から離れた辺鄙な場所にあり、訪れる人が居なければ職員も出てこない。
よく言えば静謐な空間である。人の出す音よりも、虫や風の音の方が姦しい。
遺体が燃え尽きるのを待つ人々は、故人の思い出を問わず語りに語り合う。一体どんな人間だったのか、何をして、何をしなかったのか。父母や親族との関係、友人との交流、家族との珍事。故人がどういう人間だったかを、それぞれが勝手に語り尽くす。語っても語っても出てくる、出てくる、また戻る、同じ話が繰り返される、捉え方が人によって微妙に違っている、でも答えは分からない、故人しか分からない。同じとき、同じ場所で、同じ時空を共有していたはずなのに。あの人はあの日、何を考えていたんだろう。
遺された私たちには、想像することしかできない。
白勢未生 相馬圭祐 林和義(VAICE★) 小暮智美(青年座) 安川まり 片桐はづき 井上裕朗(DULL-COLORED POP) 小山貴司 秋本雄基(アナログスイッチ) 古川貴義
原作・脚本・演出:古川貴義 舞台美術:稲田美智子 照明:南香織(LICHT-ER)
音響:岡田 悠 舞台監督:鳥養友美 衣装:中西瑞
美 音楽:monologue 記録写真:鏡田伸幸 制作:松本悠(青春事情)
企画製作:箱庭円舞曲
協力:ウィーズカンパニー écru EFFECT クリオネ チーズfilm 東宝芸能
有限会社is リベラス
助成:芸術文化振興基金
箱庭円舞曲
2000年旗揚げ。2018年現在、脚本・演出:古川貴義、俳優:白勢未生の二人ユニット。2011年、こりっち舞台芸術まつり2011春にて、第十六楽章『珍しい凡人』がグランプリに輝く。2015年2月、『必要とされている、と思う病気』で第25回下北沢演劇祭参加。
極めて日常的な人間関係を細微に描くリアリズムと、そこに漂うズレたコミュニケーションの可笑しみ、そして脳内を抉られるような感覚が人気を博している。代表作は上記のほか、『否定されたくてする質問』、『あなただけ元気』、『インテリぶる世界』『何しても不謹慎』など。
2018.09.26(水) - 2018.09.30(日)
9/26(水)19:30
9/27(木)14:00、19:30
9/28(金)19:30
9/29(土)14:00、19:00
9/30(日)13:00、17:00
一般発売日 2018年9月2日(日) 10:00
日時指定・整理番号付き自由席
前売 ¥4,000 当日¥4,500
Tel:090-9048-5268(担当:松本)e-mail:mail@hakoniwa-e.com
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