【INTRODUCTION】

マーク・トウェインは、「トムソーヤの冒険」、「王子と乞食」などアメリカ文学を代表する児童小説作家ですが、晩年に人間の存在そのものを否定するペシミズムに溢れた作品をいくつか遺しました。そのうちの一作がこの「不思議な少年」です。中世オーストリアのごく平凡な田舎町に、自らをサタンと名乗る若者が現れ、数々の事象を巻き起こしながら、人間の本質を暴いてゆくというストーリーです。世界的パンデミックの収束と共に訪れた東ヨーロッパでの戦争。世界の均衡が脆くも崩れようとしている今、日本も例外ではありません。トウェインのユーモラスで魅力的な人物描写、奇想天外なストーリーを織り混ぜて現代版の新たなる“The Mysterious Stranger”をここに登場させます。映像から舞台まで幅広く活躍する白石隼也が脚本・演出・出演をつとめます。どうぞご期待ください。

【STORY】

信仰の中に眠りこけているようなオーストリアの田舎町、エーゼルドルフ。青年テオ（斉藤莉生）は古びた教会でマーゲット（大川由愛）の弾くオルガンの音色に耳をけていた。マーゲットの叔父であるピーター神父は、教会批判の罪に問われ禁固刑を受けていたが、巷ではアドルフ神父（坪内守）がピーターを陥れたのではないかという噂であった。

二人のもとに前触れもなく良い身なりをしたひとりの青年が現れた...青年（白石隼也）は自らを天使、サタンと名乗り、何もないところから火をつけたり、食べ物を出したり、あげく小人までひねり出す。二人は畏れながらも青年の仕業に次第に魅了されてゆく。

ひとしきり二人を翻弄した青年は「人間っていうのはモラルなんてものを持っているね。そのことだけで僕と君たちとの違いは実にはっきりしてるけどな」と不可解な言葉を残して二人の前から姿を消すのだが..